
ゆっけ
こんにちは、ゆっけです。前の記事で「研修期間の生活については別記事で」と予告していたので、今回はそれをまるごと書きます。
産業動物獣医師の1年目といえば、**半年間を他県の診療所で過ごす「研修期間」**があるのが定番です。この話、転職を考えている方にとっては「知っておいてよかった」情報になると思うので、ケチらず全部書きます。
そもそも研修とは何か
産業動物獣医師の世界では、新人獣医師が正式配属の前に他県の診療所へ出向いて現場を学ぶ研修制度が広く取られています。
自分が本来配属される診療所とは別の場所で、先輩獣医師の指導のもとに実際の往診を経験する——いわば産業動物臨床の「職人修行」的な期間です。

ゆっけ
私の場合、配属予定の診療所(九州)とは別の、遠方の診療所へ半年間出向くというかたちでした。期間は4〜9月の6ヶ月間。知らない土地で、知らない先輩に教えてもらいながら、産業動物臨床の基礎を叩き込まれる時間です。
研修先がどの地域になるか、誰と一緒になるかは、ある程度事前にわかります。ただし選べるわけではない。これも運ですね。
研修先の診療所:着いてすぐ現場に投げ込まれた
研修先の診療所に到着した翌日から、往診に連れていかれました。

ゆっけ
「まず1週間は見学で、それから少しずつ……」みたいな段階はなかったです。着いた翌朝にプロボックスに乗せられて、農場へ。「じゃあ、やってみて」 が研修初日の挨拶でした。
最初のうちは本当に何もできませんでした。動物を保定する力もなければ、農家さんへの声のかけ方も、往診の順番の考え方も、全部ゼロから。
先輩たちに「そうじゃなくて」「もっとこうして」と言われながら、毎日プロボックスに揺られていました。

ゆっけ
ただ、研修ってこういうものなんだなとは思っていました。失敗しても先輩がいる。ここで失敗しておかないと、本配属後に農家さんに迷惑をかける。研修期間中の失敗は授業料——そう割り切れるようになってからは、少し楽になりました。
寮での共同生活:ない金で最大限楽しんだ半年
研修先の診療所には、上階に研修生専用の寮がありました。他の地域から来た同期の新人獣医師たちと、文字通り24時間一緒の生活です。
このメンバーが、良かった。

ゆっけ
みんな違う大学出身、違う地域から来た獣医師。バックグラウンドも話し方も全然違うのに、「月給20万円の薄給組」という共通点があるだけで、不思議と仲良くなれました。
夜ご飯はみんなで出し合って
月給20万円——家賃なし・光熱費なし(寮なので)とはいえ、食費は自分で出さないといけない。でもみんな同じ懐具合。
自然と、こんなスタイルになりました。
買い出しは当番制。1週間ごとに担当が回ってきて、スーパーで食材を買い込んでくる。料理も当番制で、得意な人が腕を振るう。

ゆっけ
私は料理が得意なほうだったので、当番の日は張り切って作っていました。帰宅が遅い先輩獣医師の分も残しておいて、寮の廊下を通った先輩が「おっ、今日なんだ?」って部屋に入ってくる。この感じが、居酒屋よりも家族の食卓よりも——なんか好きでした。
洗濯機の争奪戦も楽しかった
共用の洗濯機が1台しかないので、朝から「今日は誰が先か」問題が発生します。でもそれも含めてネタになる。

ゆっけ
往診から帰ってきて汗だくのつなぎを洗いたいのに、誰かの洗濯物が入ったまま放置されている——これは全員が経験する洗礼です。「誰だーっ!」って笑いながら怒るのも、半年も経つと風物詩になりました。
お金はなかったけど、生活コストが低い分、不自由はそれほど感じませんでした。むしろあの研修期間の寮生活は、社会人になってから初めての「共同生活の楽しさ」でした。
月給20万円の現実:でも詰まるのは1点だけ
「家賃なし・光熱費なし・食費は折半」という暮らしなので、正直20万円で意外となんとかなりました。

ゆっけ
食費は思ったより安く抑えられました。問題は交通費だけです。彼女に会いに行く交通費が、財布に直撃してくる。
こだまで4時間——節約と愛情のトレードオフ
当時、遠距離恋愛中でした。
研修先は九州とは別の地方。彼女がいるのは九州。月に1回ほど会いに行っていたのですが、その距離が「頑張れば日帰りできなくもない」という絶妙なライン。

ゆっけ
「のぞみ」や「さくら」を使えば2時間弱で着く距離。でも往復で交通費が2万円超える。月給20万円の身にはそれが重い。
そこで選んだのが——「こだま」。
新幹線の各駅停車です。追加料金なしで乗れる代わりに、のぞみが通過する駅でいちいち待避して停車する。のぞみの2倍以上かかる。往復4時間以上の旅です。

ゆっけ
でも私、あのこだまの旅が嫌いじゃなかったんですよ。窓から景色をぼんやり眺めながら、研修で覚えたことを反芻したり、次の往診のイメトレをしたり。長い分だけ「移動する時間」に意味が生まれる感じ。「こだまでよかった」と思える時間でした。
とはいえ、4時間はやっぱり長い。何度か爆睡して目が覚めたら、出発地に近い駅まで引き返していたことも。その日は彼女に会いに行くのを諦めて、寮に戻りました。

ゆっけ
「新幹線で寝過ごして折り返す」という体験、あなたにはしてほしくない。
研修で何を学んだか
6ヶ月の研修が終わる頃には、着いた初日との違いを実感できました。
- 農家さんへの話しかけ方、距離感の取り方
- 往診の段取りと優先順位のつけ方
- 「急患と予定の割り振り」の肌感
- 往診車の中での準備と補充の習慣
- 先輩によって全然違う診断アプローチを見てきたこと
技術よりも、「産業動物臨床の空気感」を体で覚えた半年間だったと思います。

ゆっけ
あのとき研修先で怒られたこと、褒められたこと、見様見真似でやってみた処置——全部が、本配属後の自信の根っこになっています。
研修先の先輩には今でも感謝しています。きつい人だったけど、手を抜かずに教えてくれた。
本配属前夜:寮を出る日
研修最終日の夜、同期みんなで近くの居酒屋に行きました。
それぞれが別の地域に本配属になるので、ここで解散です。「また会えるのかな」と半分思いながら、「この半年は本当に濃かったな」と純粋に感じていました。

ゆっけ
研修が終わって九州の診療所に戻る道、プロボックスの助手席から窓の外を見ながら「あー、ここからが本番だ」と思ったのを覚えています。あの瞬間の解放感と緊張感が混ざった感覚は、今でも鮮明です。
研修期間を経て本配属になると、給与がそれなりに上がります。月20万円の薄給を耐えた分が、2年目以降に回収できる構造です。
給与の変化については、産業動物獣医師1年目の給与を公開!臨床のリアルな手取り に詳しく書いています。
まとめ
産業動物獣医師の研修期間は、正直なところ「お金が少なくて大変」という面もあります。でも——
- 同期との寮生活で身につくコミュ力と絆
- 本配属前に失敗できる安心感
- 「産業動物臨床とはこういうものか」という肌感覚
この3つは、研修期間でしか手に入らないものです。

ゆっけ
「研修期間、大変そうだから産業動物やめようかな」という方がいたら、それは少しもったいないかもしれません。月20万円で4時間こだまに乗った先に、ちゃんとその後の5年間がありました。
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※ 研修制度の内容・期間・手当の有無は診療所・団体によって大きく異なります。転職前に必ず各診療所の採用担当へ確認してください。
